「アイスタイム 鈴木貴人と日光アイスバックスの1500日」という本

 先日、カフェの常連さんから、ご自身が執筆された本をいただきました。
 タイトルは、「アイスタイム 鈴木貴人と日光アイスバックスの1500日」。
 
 「アイスタイム」?「鈴木貴人」?「アイスバックス」?
 のっけから、タイトルに認識できる単語が皆無。
 にもかかわらず、あっさり読み終えてしまったのには、何をするにもスローモーな店主自身驚きでした。

 先のタイトルについてですが、簡単に説明しますと、順に「アイスホッケーにおける個々の選手のプレー時間」「日本代表キャプテンとしてアイスホッケー界を支えてきたスーパースター」「日光が本拠地の日本初プロアイスホッケークラブ」。
 つまりこの本は、日本において、ともすれば、マイナースポーツの範疇に入れられてしまうアイスホッケーをとりあげたドキュメンタリーということになります。

 ここに語られてるのは、SEIBUの廃部にともない鈴木貴人がバックスに移籍した2009年リーグ開幕から今年2013年6月の彼の引退セレモニーまで。
 相手チームと戦う前に、チームメイト同士アイスタイムを懸けてしのぎを削る鈴木貴人はじめ選手たちの生き様は無論熱いものがあるのですが、負けないくらい熱いのが、古河アイスホッケー部廃部から始まるプロクラブ「日光アイスバックス」の歴史を守ってきた経営陣、スタッフ、サポーターや市民たち。
 氷上でのバックスの苦闘が描かれる合間合間に差し込まれる、彼ら「裏方」の奮闘ぶり。これが、なんとも胸を打つのです。

 バックスのホームタウン、日光市の人口はたかだか9万。面倒見がよくサポーターたちから「会長」と慕われている人物にスポットをあてたくだりで、筆者は、やはり雪印から生まれたプロクラブ、札幌ポラリスが1年で解散に追い込まれたことを引き合いに出しております。
 なぜ、180万都市にそういう人がいなかったのかと。

 バックスが資金難に陥るたびに行われてきた市民による募金活動の輪。
 世の中捨てたものではありません。そんなファンたちのバックスへの思いが報われる瞬間が訪れたのは、2012年3月、本拠地霧降アリーナでのこと。
 バックスがチーム史上初めて進出したプレーオフファイナル第4戦終了間際、鈴木貴人が同点ゴールを決めます。止むことのない「アイスバックスコール」。バックスの日本一という夢に寄り添える数分間がこうしてファンに進呈されたわけです。

 『・・・同点に追いついただけで、何かを手にしたわけではない。かりにこの試合をひっくり返したとしても、まだ2勝2敗のタイに過ぎないのだ。さらに言えば、2012年3月24日に山奥の小さな空間で起きようとしている小さな奇跡を、日本のスポーツファンのほとんどが知るよしがない。結果がどうあれ、翌日の新聞には2段程度の記事が載るだけだ。しかし、それがどうしたというのだろう。お金にも名誉にもならないが、そこには人々の希望が託された幸福というものの形があった。小さな幸せかもしれない。しかしそれは誰にも奪われることのない特別なアイスタイムだった。・・・』

 こんな泣かせるセンテンスがたくさんちりばめられてるこちらの本。
 皆さま、是非ご一読を。

 読み終えた後、思わずパソコンを起動して調べたアイスバックスの試合日程。
 例年、最終戦は東京で行われることを知りました。 
 来年3月、店主はきっと、時ならぬ熱気に当てられに、東伏見のアイスアリーナに足を運ぶことになるでしょう。
 

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 ちなみに、本のカバーデザインはスケートのブレードがリンク上につけた跡を転用したそう。
 こちらも秀逸。





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by arkku | 2013-12-13 12:13 | 雑記