朝です。
奇跡か執念か。
丸一日ベッドの上で安静にしていたかいがあり、痛みは残ってるものの体を動かせるくらいまで嫁さんの首が回復しました。
油断禁物ですが、1日分取り戻そうとマンハッタンの88丁目からどんどん南下する予定経路スタートです。
まずはここ、新婚旅行で訪れて以来のグッケンハイム美術館。
NYに来るたび足を運ぶMETが82丁目ですから、5番街をあと数ブロック北上するだけなのですが、毎回時間切れの憂き目にあい来れてませんでした。
久方ぶりにじっくり観て回ろうと思いきや、ご覧の通り三回廊ほどが改装中で展覧不可。
その分入館料がディスカウントされてました。
特異な中央部の巨大な吹き向け。 観覧者は、らせん状の通路に掛けられた画を観ながら階下に降りて来るという仕掛けです。 緩やかとはいえ絶えず傾斜したフロアが続くため鑑賞環境に疑問を呈する人もいるといいますが、地球上のどこにもそんな美術館は存在しないのですから、そこを楽しまない手はないと店主は思うのです。
上から階下を覗くと、曲線で構成された構造物というのがよく実感できます。
建設中の美術館を視察する設計者のフランク・ロイド・ライト。
この天才建築家は、グッケンハイム美術館の完成を待たずじて、その半年前に死去してしまいました。
キャプションも壁の曲面に沿って張り付いておりますね。
ちょうど、没後30年になる写真家ロバート・メイプルソールの回顧展が開催中でした。
写真は、ブルックリンの美術学校時代からの同棲相手、「パンクの女王」パティ・スミスのポートレイト。
アーティスト、ローリー・アンダーソン。
NYの伝説的グループ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのリーダー、ルー・リードの奥様です。
ゲイ・カルチャーやパンク・ムーブメントが興り始めた時代に登場してきたメイプルソールは、その端正なマスクもあいまって美術写真分野のスターでした。
アーティストやセレブのポートレイト、そして俳優やロックスターの如きセルフポートレイト。
印象的な黒人男性のものをはじめとする様々な人種性別のヌード。
花や果実の静物写真。
果てはSM写真まで。
生前はその作風から裁判沙汰に発展するスキャンダラスな話題が多かったメイプルソールですが、さまざまなジャンルで発揮された彼の美しすぎる構図は今なお刺激的です。
会場内はけっこう子供連れも目立っており、「こんなの見せちゃっていいの?」という作品も多々あったりするのですが、「アートですから、いいんです」ということなのでしょう。
5番街を86丁目まで南下して、クリムトの「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像Ⅰ」があるノイエ・ギャラリーへ。
元々有名な作品でしたが、映画「黄金のアデーレ」でその数奇な来歴が描かれてからは、広く一般に知られるようになりました。
ノイエの入館許可証はアルミ製です。
クリムトが素晴らしいのはもちろんですが、鑑賞後スルーできないのが館内にあるCafe Sabarsky。 切り口美しいザッハトルテともりもりのアインシュペナー。 NYにいることを忘れてしまいそうな趣きあるウィーン風カフェで、しばしクリムトやシーレたちウィーン分離派が躍動した時代に思いを馳せる店主でした。
さらに70丁目まで南下して、フェルメールがあるフリック・コレクションに。 庭の花々がいつもきれい。 派手な方は、チューリップですか? 贅沢なことに、ここには噴水付き屋内パティオがあるのですが、夜パーティーが予定されてるようで、白シャツ、黒エプロンのギャルソンたちがそそくさと準備に勤しんでおりました。 20世紀初頭で時が止まったかのような風情あるこの邸宅美術館を貸切れるうらやましい人物って誰?
さらにさらに5番街を南下していくと、ワシントン・スクエア公園に行き当たります。
つまりこの公園が、世界有数の高級商店街である5番街の北の端。
パリのそれを模した公園入口の凱旋門は、ジョージ・ワシントンが初代大統領に就任して100年目のお祝いで建てられたものとのこと。
実はこの公園、店主には思い出深い場所であります。
大学卒業旅行で初めてNYを訪れた際の宿が公園すぐそばのここ、Washington Square Hotel。
NYから帰国してしばらくするとまたぞろ湧き上がってくるこの都市への郷愁は、この時の鮮烈な体験に間違いなく起因しておるのです。
当時、NYで一番発信力があった最先端エリアは、公園南のソーホー地区でした。
今や海外での頼みの綱、グーグルマップなぞない時代。
とにかく朝から晩まで、通りという通り、店という店を片っ端から覗いて回ったのが思い起こされます。
まさに冒険。
今では二の足を踏む「やばい」ところに迷い込んだりもして。
若かった、ということでしょう。
このときは3週間いたのですが、毎日のように朝飯を食べに行ってたダイナーがありました。
トーストやパンケーキに卵料理とポテト、おかわり自由のコーヒーがセットになったアメリカンモーニングの流儀はそこで知りました。
場所はすっかり忘れておりましたが、ホテルから少し歩き6番街大通りを渡ったところで思いがけず再遭遇。
一気に記憶が遡り、店主はうるうるしてしまいました。
ウエストヴィレッジで今も健在だったこの店、Waverly Dinerです。
そのときは、真反対の方向から訪れたのと闇夜のせいで気が付きませんでした。
ほんと奇遇です。
本日の夕飯。
嫁さんのNYでの得意先女子のおすすめ、Hao Noodleの重慶鍋風牛肉麺。
ゆったりしていて洗練された店装。
知ってる限りにおいて、世界一おしゃれな中華麺屋さんではないでしょうか。
偶然にも、Wavery Dinerから通り沿いに歩いてすぐのところでした。
NY最後の夜です。
先日のライブが楽しすぎたので、またSmallsに来てしまいました。
前回30分前に列に並んでぎりぎり入れたので、今回は頑張って1時間前に到着。
その甲斐あって席を前方に陣取れました。
生はやっぱりいいですね。
トランぺッターの彼が、チェット・ベイカー風のバラードを吹いたところでは店主の涙腺崩壊。
地下鉄でイーストヴィレッジに移動。
こちらのパンジャブ料理デリは24時間営業なので、夜ひとしきり遊んだ後でも使い勝手よし。
2種類野菜カレーが選べるSmall Bowl Of Riceにサモサをつけて、7ドル!
どこの街でもそうですが、お金次第でおいしいものはいろいろ食べれる。
でも、探せばローカルに長く愛されるお手頃な名店も必ず存在するわけです。
強行軍でしたが、嫁さんの首も何とかもって無事8日目終了です。