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 ”好きな映画がロードショー公開された季節感を追体験してみたい”シリーズ!
 というわけで、今夜のアルック座は、「ロッキー」。
 38年前の1976年11月21日に公開されました。

 テレビドラマ一本分ほどの低予算で撮られながら、アカデミー作品賞に輝いた本作のヒットにより、この後、6作目までシリーズ化された「ロッキー」ですが、店主的には、この1作目と2作目以降のシリーズは 全く異質な別物ととらまえております。

 三流ボクサー、ロッキー・バルボアは、ひょんなことから世界チャンピオンと対戦するチャンスに恵まれます。
 ジョッキ一杯の生卵を飲み干し、くたびれたスエット姿で、夜明け前のフィラデルフィアの街を美術館に向けて一人走り出すロッキー。対戦に向けて、こうしてトレーニングを初めた彼でしたが、誰がみてもこの時点では、世界チャンピオンが待ち受けるリングはとてつもなく高い頂のように思われます。
 しかしながら、徐々に広がっていく善意の輪に支えられ、ロッキーはどうにかこうにか「スラムを代表する挑戦者」としてリングに上がる日を迎えられます。
 
 

 ロッキーが「生身の人間」として描かれていたのは本作にとどまっていて、これ以降の一連のシリーズは、ある意味「ロッキー」のパロディムービーといえるかもしれません。
 店主にとって、ギリシャ彫刻のような筋肉をまとい、この世のものとは思えないような強敵を倒していく超人ロッキーに、明け方の凍てついたフィラデルフィアの街をよれよれスエットで走っていたロッキーを重ねることは、飛躍の域を超えているものがあります。

 ところで「ロッキー」には、もう一つのエンディングが用意されていた事実をご存知でしょうか。
 リング上でエイドリアンと抱擁を交わすロッキーの腫れあがった顔の大写しで終わるお馴染みの幕切れとは別に、控室で待っていたエイドリアンとロッキーが連れ立って、会場の裏口からひっそり出て行ってお終いというもの。(こちらのシーンはポスターにその名残りをとどめております。↓)
 アメリカンドリームというお伽話を終わりにして、ささやかなる現実世界へ二人して帰ることを暗示するようなこちらの結末もまたよいですねぇ。
 もしも採用されていたとしたら、自分というものの証明を一義にした戦いに挑む男のストーリーという本質が、よりすっきり伝わってくるラストになったであろうと思います。
 

 大根も名優へと変貌を遂げる。
 「脚本家」スタローンが周囲の反対を押切って、自作「ロッキー」の主役にこだわり、それは本人の確信通りはまり役になりました。
 そしてフィラデルフィア美術館の正面階段を駆け上るロッキーさながらに、彼がスターの座を勝ち取りアメリカンドリームを成し遂げた「ロッキー」。
 いつものように、夜7時くらいからスタートします。
 お楽しみに。

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 もう先月のことですが、新美で開催中の「チューリヒ美術館展」を観てまいりました。

 
 正直お目当ては、縦2m×横6mの特大キャンバスながら、真ん中で2分割できるため航空輸送が実現できたというモネの睡蓮の壁画でありました。
 モネの睡蓮の連作といえば、パリのオランジェリー美術館にあるのもが何といっても有名でありますが、今回チューリヒから来た睡蓮も、あの水面に引き込まれてしまうような感覚を間違いなく体感させてくれる壮大さを持ち合わせています。

 朝の開館と同時に館内に飛び込み、睡蓮目指してダッシュ。
 まずはじっくりとこの壁画と向き合う。
 睡蓮と一緒に水面でゆらゆら浮かんでるかのような「浮遊感」をしばし楽しんだ後、さして期待感もなく他の画を観始めて、これが驚いた!
 印象派からシュルレアリスムのくくりなので、ゴッホやゴーギャンやピカソの画の出展もあるにはあるのです。
 でも、過去そこそこの数の展覧会を観てきたつもりですが、彼ら大巨匠の画が霞んで観えたのは初めての体験。
 結局それほど、今回チューリヒから来た作品群は、一級の粒ぞろいでありました。

 始まりが素晴らしい。
 セガンティー二が象徴主義に転じた頃の重要な作品が2点。
 この「アルプスの画家」たる明るく牧歌的な画ももちろん好きですが、母性への回帰を象徴的に描いたこれらの幻想的な作品には、この画家の独創性が強く感じられます。
 なぜ、本展にこれが?

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 ジョヴァン二・セガンティー二「虚栄(ヴァ二タス)」
 1897年 油彩・カンヴァス 77×124cm


 考えてみれば、イタリア出身のセガンティー二が、明るい陽光に魅かれ、その画業のほとんどをスイス・アルプスで成したことを思えば、スイス最大の都市の美術館がその重要作品を所蔵していることは不思議なことではありません。
 そんないきさつで本展においては、スイス出身の画家であるホドラーやジャコメッティ、そして、スイス国家もしくはチューリヒ美術館に縁があるセガンティー二やムンク、ココシュカ、クレーたち巨匠には、それぞれひと部屋割いての展示がとられております。

 ナビ派の部屋では、思いがけずヴァロットンにも会うことができました。
 ヴァロットンらしい密会の男女のいる演劇的室内画や平面的背景から浮き上がるような肉感的な裸婦像は、あの暑い夏の日に三菱一号館で観た「ヴァロットン展」の鮮烈な印象を思い出させてくれるもの。
 ローザンヌ生まれの彼は、もちろんスイス人であります。

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 フェリックス・ヴァロットン「訪問」
 1899年 グワッシュ・厚紙 55.5×87cm

 

 大満足で展覧し終わり、会場出口付近に置かれてあった本展チラシをあらためて拾い上げ目を通すと、「圧巻!すべてが代表作」の文字。
 美術展のチラシは、大抵内容をより大きく盛る?ものですが、チューリヒに関しては看板に偽りないと思います。
 東京では来月15日まで。
 必見です。お見逃しなく。

 チラシにはこうもあります。
 「美の大国、スイス」
 確かに、本展ではこれが一番の発見でした。






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by arkku | 2014-11-11 11:11 | 雑記