愛と哀しみのボレロ

 ”好きな映画がロードショー公開された月日に合わせて鑑賞することで当時の季節感を追体験してみたい”シリーズ!
 というわけで、今夜のアルック座は、「愛と哀しみのボレロ」。
 36年前の5月27日に公開されました。


 ...両親の才能を引きついでボリショイ・バレエ団の名ダンサーに成長したセルゲイ。その後、彼は西側に亡命...
 ...ナチ収容所送りの途中、両親の機転である駅に置き去りにされた乳飲み子は、その土地の牧師のもとで育てられ、ダビッドと名づけられ成長していた。彼はパリで作家として成功...
 ...私生児として祖父母に育てられたエディットは、パリに出て貧乏暮しをしながらショーガールになり、やがてTVのニュース・キャスターに...
 ...エディットの実の父であるカールは、ヒトラーの前で演奏し認められ、パリで軍楽隊長をしていた過去を持つ。戦後、指揮者として成功した彼は、ニューヨークで米初演を果たすが、ユダヤ人によるチケット買い占めで、観客わずか二人という屈辱を味わう...
 ...人気ジャズミュージシャン、ジャック・グレンは、ヨーロッパ戦線に従軍後、アメリカに戻って妻で歌手でもあるスーザンを交通事故で失う。娘のサラは、親の血を受けて同じく歌手として成功...
 そして、1981年、パリ。トロカデロ広場には、多くの観客がつめかけ、今からはじまるユニセフ・チャリティ・コンサートを息をのんで待ちわびていた。TVの進行役はエディット。踊り手はセルゲイ。指揮者はカール。歌うのはサラ、そしてダビッドの息子であるパトリック。運命の糸にあやつられるようにこれらの芸術家たちが、今、一同に会して、一つの曲ラヴェルの「ボレロ」のもとに結集されるのだった。(KINENOTEより抜粋)


 禍福は糾える縄の如しとはよくいったもの。
 1930年代の戦前から、戦中、そして現在と、半世紀にも及ぶ時間軸。
 パリ、ニューヨーク、モスクワ、ベルリンを行ったり来たりするワールドワイドな舞台の設定。
 登場人物たちは、2世代4家族の人々。しかも、父親と息子、あるいは、母親と娘を、一人の俳優が二役演じるというややこしいようなややこしくないような配役...。
 ともかく、観客は、185分という長尺の本作を観るにあたって、複雑な筋立ての解読作業をずっと強いられるわけであります。
 

 でもでも、労苦は報われる。
 ジョルジュ・ドン演じるセルゲイが「ボレロ」を踊る、あのとっておきのクライマックスが待っていますから。
 最初から最後まで変わることのない同じリズム。メロディも、A、B、2つのパターンだけのラヴェル作曲「ボレロ」。フルート単独で始まり、メロディが繰り返されるたびに楽器構成の厚みが増していきます。そして、音量が最高潮に達したところで終焉。
 監督クロード・ルルーシュの演出の冴えはここに極まり、映画に入れ代わり立ち代わり登場してきた4家族の人々を、この「ボレロ」の演者側と観客側に配し、繰り返されるメロディに合わせて彼らをカットバックしていくわけです。
 この13分に及ぶ「ボレロ」の曲想そのものが、本作に描かれた4つの家族史を束ねて象徴しているかのように。

 
 「人生には2つか3つの物語しかない。しかし、それは何度も繰り返されるのだ。その度ごとに、初めての時のような残酷さで。」
 ウィラ・キャザー(米小説家)のこの言葉を本作冒頭で紹介しているルルーシュの意図が、ここにきて解けるわけです。


 いつものように夜7時からスタート。
 お楽しみに。

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