ティファニーで朝食を

 1月20日は、オードリー・ヘップバーンの23回目の命日にあたります。
 アルック座では、”Audrey January”と銘打ちまして、2週連続でヘップバーン主演作を取り上げます。
 というわけで、彼女を偲ぶ今夜の作品は、1961年に公開された『ティファニーで朝食を』。
 

 いうまでもなく、ヘップバーンの代表作である本作。
 原作は、ノーマン・メイラーをして「もっとも完璧に近い作家」と言わしめた早熟の天才トルーマン・カポーティ。
 小説の映画化となるとよく起きがちなことですが、『ティファニー』にしても、小説と映画で描かれている世界観の差異が甚だしい作品として挙げられることが多いといっていいでしょう。
 
 事実、カポーティが映画化を許可した第一条件は、主演にマリリン・モンローを据えるということだったといいます。
 主人公のホリーが高級娼婦とも捉えられかねない設定であったことから、モンロー側がイメージ低下を嫌ってこのキャスティングは頓挫。カポーティは、ヘップバーンがホリー役を演じることになり、彼女に合わせてシナリオを書き直すことにしたパラマウント社に不快感を表したといいますから、この主役交代劇によって、小説と映画が別物になってしまうことを予見していたのでしょう。

 とはいえ、2008年に小説『ティファニー』の新訳を手掛けた村上春樹氏もあとがきで述べておりますが、原作とかい離しているからといって、その映画自体の出来栄えを左右ものでもありません。
 ・・・映画は映画として面白かった。あの時代のニューヨークの風景がとても美しく楽しく描かれていた。だから映画と比較してとやかく言うのはもうやめよう。・・・
 ただ、春樹氏は、原作に忠実なリメイクを望めないものかと続けております。すると、新たな悩みが。
 ・・・なかなか具体的な名前が思い浮かばない。困りますね。本を読みながら、どんな女優がホリーに相応しいか、ちょっと考えてみて下さい。・・・

 「ティファニーの店内にいるみたいな気持ちにさせてくれる場所が、この現実の世界のどこかに見つかれば、家具も揃え、猫に名前をつけてやることだってできるのにな。(村上春樹訳)」
 小説版『ティファニー』で、主人公ホリーは、「ティファニーみたいなところ」を、「自分といろんなものごとがひとつになれる場所」とも語ります。
 そこは、真の安らぎを得られるシェルターのようなところなのでしょうか。
 となるとです、原作に沿うならば、タイトルは「ティファニー(のような場所)で朝食を」というニュアンスをもちえているのかもしれません。
 映画の試写を観たカポーティは椅子からずり落ちんばかりに驚いたといいます。
 早朝、ティファニーのショー・ウィンドウ前で、朝食のクロワッサンをヘップバーンにかじらせるタイトルずばりのベタな設定で映画が始まったからでした。

 原作とかけ離れた演出に、カポーティは茫然自失といったところでしょうが、ジバンシーの黒いドレスをまとったヘップバーン、朝もや煙るマンハッタン五番街、そして流れるは、ヘンリー・マンシー二のあの「ムーン・リバー」。この有名な、映画版『ティファニー』のオープニングの完璧な美しさには、何度観てもため息をつかされてしまいます。

 いつものように、夜7時からスタート予定。
 お楽しみに。

a0187509_18344992.jpg





[PR]