C階段

 ”好きな映画がロードショー公開された季節感を追体験してみたい”シリーズ!
 というわけで、今夜のアルック座は、「C階段」。
 33年前の6月6日に公開されました。

 ...パリのありふれたアパルトマンの“C階段”を舞台に、そこに住むスノッブで皮肉屋の美術評論家を主人公にすえて、彼がふれ合う人々の暮らしや、他人との軋轢の中で人間的に成熟していくさまを描く...(allcinemaより抜粋)

 フランス映画らしい小品。
 フランス映画らしさって、もちろん一義的ではありませんが、およそ修復不可能なくらい事件が続出しながら最終的にハッピーエンドに納まる典型的アメリカ映画のことを、故安西水丸さんは「アメリカばなし」とよばれておりましたが、くらべて、本作のように、大事態はほぼ起こらず、淡々とした語り口で綴られるというのはフランス映画にみられる一面といってもいいでしょう。

 「アメリカばなし」に馴染まれてる方には、「退屈な映画」と烙印を押されてしまう危険性もありますが、監督や脚本家、カメラマンの美学が色濃く反映された作品に流れる首尾一貫したある種のムードは、それが好みのものであった場合、たまらない深みとして感じられるのもまたフランス映画の「らしさ」であります。

 さて、若き頃より、シネフィル(映画狂)だった本作監督ジャン=シャルル・タルケは、19歳で映画批評誌「レクラン・フランセ」に入社します。
 この雑誌には、印象派の巨匠ルノワールの次男であり、映画監督であったジャン・ルノワールが協力者として名を連ねておりました。
 彼とタルケ監督に親交があったかどうかは定かではありませんが、本作には、主人公フォステルの心情に影響する小道具として、ルノワール作「じょうろを持つ少女」が使われています。本作でも印象に残るシーンのひとつが、パリ市内の美術館でフォステルがこの画に魅入られるところです。
 
 ところが、「じょうろを持つ少女」は、実際はアメリカのワシントンナショナルギャラリーの所蔵作品です。
 当然、パリにも他に、ルノワールの代表作はわんさかありますが、タルケ監督は架空の美術館を敢えて設定したということになります。
 主人公が目にすべき作品は、この「少女」でなければならなかった理由は、本作をご覧になって推論してみてください。

 いつものように、午後7時ごろからスタートいたします。
 お楽しみに。

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 ピエール・オーギュスト・ルノワール 「じょうろをもつ少女」 
 1876年 油彩、カンヴァス 100.0x73.0cm 
 ワシントン・ナショナル・ギャラリー蔵




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